5つの小さな擁壁

現場_C.jpg
S__45096990
181_I8A9628
185_I8A0003
186_I8A9621
191_I8A9611
167_I8A0167
261_I8A0190
200_I8A0101
255_I8A9554
253_I8A9543
176_I8A9559
236_I8A0372
232_I8A0366
内覧会

どんな住宅でも大地に接して建っている。ただ、それを実感できる生活空間というものはほとんどない。そもそも、人工の建築の「均質さ」と自然の大地の「複雑さ」の間には、大きな解像度のギャップがある。それを更地や造成によって無理やり均質化し、「大地」を「土地」へと変換することで、建築計画は自由さを獲得している。

この前提条件を疑うことから、現代の建築がはらむ均質性を打ち破る手がかりを見つけ出すことができるのではないだろうか。人間にはつくりえない大地の不雑さや多様さ、その解像度に寄り添うように建築や空間をつくることが

できれば、発見的で創造的な生活というものが生み出せるかもしれない。

険しい地形の中腹にある世田谷の住宅街。そこに若い夫婦と子供4人の家族が新居を考えていた。

周辺宅地のほとんどは、巨大なコンクリート壁で造成された均質な土地の上に家を建てる形式をとっていた。

一方この計画地では、造成のお膳立てがなく高低差3.5mの荒々しい傾斜をもった大地が広がっていた。

そこで、大地をリノベーションすることから始めることにした。地形を活かすように小規模の掘削をたくさん行う。そこに生み出されたまばらな土の高さに合わせ、擁壁をその場所ごとに考える。すると、自然と人工の合作のような「5つの小さな擁壁」が建ち現れた。各擁壁の形は異なるが、すべてL字、T字といったリブ付きの平面形状とし、極力薄い厚みで土圧を支える。小さく薄くすることで、擁壁という土木的異物を、人間の生活空間に馴染む存在とし、地熱環境も含めて家の中に取り込もうと考えた。 大地と建築の格闘の痕跡として、その間に生まれたこの複雑な境界面が、その場の暮らしに躍動感を与えてくれるはずだ。

建物は、擁壁と基礎によるこの大地のストラクチャーの上に積み重なるように建設し、RC造と木造の上下2層構成とした。下層のRCの空間は、いわゆる木造の床下基礎スペースを室内としたもので、それらも居住空間として使うことで、多様な環境のスキップフロアを吹抜けのワンルームで同居させている。擁壁は、その背後に背負う土も壁の層のひとつととらえ、安定した地熱を室内にもたらしつつ、深さの度合い(埋没、半地中など)を多様にすることであえて環境のムラをつくった。木造は、吹抜けに梁を空中露出させ、将来自由に増床しやすい開放的な架構とした。床レベルごとに異なる環境や構造が混在し、居住者はその差異を嗅ぎ分けながら、自分で居場所を発見し使い方を創造していける。

「場所」に住んでいる実感を取り戻したい。それは、単に床を土にすることでは得られない。

自然と人工の葛藤によって大地のストラクチャーをつくりだし、人がそれに支えられ包まれることではじめてその実感を得られるのではないだろうか。地表から生えたような生命感、それで満ち溢れた建築を目指した。

(武田清明)

 
176_I8A9559